ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
突き当たりに塞ぐのは、灰白色の石造りの扉。
櫂が掌を向け風の力を発したが跳ね返される。俺の炎も同様だった。
この石扉を何とか出来ねえ以上、ここから先は行き止まりだ。
扉の表層に彫られているのは、
2種類の奇怪な手の絵だった。
親指以外の指を立てた、いわゆる"4"の数字を示しているリアルな左手の絵と、その手の形を直線で顕し、真ん中に目玉が描かれた図形。
その2つの下には、象形文字のような記号が羅列している。
如何にも意味ありげで、
だけど意味がさっぱり判らねえ描画。
櫂はそれを睨み付けるようにして見ていたが、
「緋狭さん…感謝します」
そういうと、ぴんと立てた左手の人差し指と小指以外の指を畳み折り、それを扉の手の絵に近づけた。
そして、
「力を与えよ」
そう唱えると――
扉の描画が突如発光し、
重そうな扉が勝手に横に動き始めたんだ。
「櫂、お前何やった!?」
まるで"開けゴマ"じゃねえか!!
思わず叫んだ俺に、櫂は薄く笑いながらその漆黒の髪の毛を手で掻き上げた。
「昔――緋狭さんに言われたことがあった。もしこの先、奇妙な"手の描画"が行く手を妨げることがあれば、こうしてみろと。
この刻印はただの模様ではない。醸し出す気の種類からいっても、俺と同じの――闇属性のものだ」
櫂は怜悧な瞳を更に警戒に鋭く光らせ、開かれた入り口を潜った。