ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「この古びた部屋の様子と気の具合を見れば、最近作られたような真新しいものではないな。

だとすれば――仕向けたのは、隠秘(オカルト)好きな篠山亜利栖ではなく、やはり藤姫の意思が濃厚か」


「だけどこうした魔術なんてもん、生け贄捧げればすぐ結果が出るもんなのかよ?」


「長く準備をしていたんだ。"太陽が獅子座の位置に入る、収穫祭の日蝕"……即ち今日の為に。

御子神祭は収穫祭に相当する。毎年の御子神祭の神気をここで吸収し、来るべき時の為の力の糧としていたかもしれん。


ははは、国家の治安を護るべきこの場所で、治安を乱すものが作られているとは誰も気づくまい」


「これで何する気だよ、あの女は」



「無論、東京破壊。

そして血染め石の奪取。


……故にその主たる俺の牽制」


あんなに多数の犠牲者を生け贄にしねえといけねえ程、櫂はすげえのか?


でもよ、当初櫂は血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の呪詛にあてられたじゃねえか。


それが、前とは比較にならねえ程の血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)になぜ平気だ?


まあ完全平気なわけじゃねえみたいだ、時折胸に手を置く仕草をしてるから。


「確かに玲の力は強くなったけどよ、緋狭姉の援護もあるけどよ、それでもそんなんで櫂がすんでいるのが、何か腑に落ちねえんだけど」


そう言うと、櫂もそれは奇妙に考えていたらしくぼそりと呟いた。


「俺は藤姫と氷皇に遊ばれ続けて、今この場にお前と居る。


これは偶然ではなく、

必然のような気がするんだ。


そして緋狭さんの言葉。


――玲が、あいつが俺への呪詛を回避する為に、きっと何かをしたと思う」


「何を?」


「考えられる最悪のことは……」


そして櫂は一旦言葉を切ると、俺を見た。



「あいつ――…

俺の身代わりになろうとしている」


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