ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
櫂に代って呪詛を受けるというのか?
「あいつ、心臓弱いんだぞ!?
身体が耐えられるはずねえじゃねえか!!」
櫂は答えず、代わって悔しそうに唇を噛んだ。
その固い面差しは、冗談ではないことを語っている。
言葉が出ずに玲の覚悟をあれこれ思う俺に、やがて櫂は言葉をかけた。
「気づいたか、煌。
ここの気は…
藤姫の邪気と同質のものだ」
俺は反射的に目を細める。
「故意的に配置されたこれら環状列石のせいか、もしくはここの石を守護石として力を引き出せるのかは判らないが、藤姫は恐らく、人を操る邪視だけではなく、紫堂のような陽動的な力も持っているのだろう。
藤姫がこの場に染まった凶気で満ちているのから、制裁者(アリス)の邪眼の制御も必然的に、同じ闇科の…俺の血染め石を操れるということか。
ならばむしろ、守護石を持たない今の俺の方が――」
櫂は右手を上げ風を纏い、左手でその手首を掴んで力を放出させた。
その風は、魔方陣の中央にある石群に向かったが、そこに行き着く前に、不自然な角度で魔方陣の外へ……壁に弾き飛ばされた。
「今の俺の方が、藤姫の力の源に近づくことも出来ない」
「緋狭姉の力ならどうよ?」
腕環から一直線上に放出された炎は、やはり何か見えない何かに跳ね返される。
「緋狭さん本人が放つ力なら……とも思うが、此の場所を今まで見過ごす緋狭さんでもないだろう。ということは、出来なかったとしか言い様がないな」
緋狭姉は恐らく……入り口の扉を開ける方法が判っても、開けることが出来なかったんだろう。
だから、闇石を司る櫂ならばもしかして可能かもと、先に開ける方法を伝授していたのだろう。
――緋狭さん、感謝します。
藤姫の源がここなら今すぐぶっ壊してやりてえが、緋狭姉でさえも手が出せなかったものを俺如きが何とか出来るわけねえ。
どうしようか、そう思いあぐねていた時だ。
地面の魔方陣の文字から突如白い光が立上り、1つにうねりながら天井に向かって伸びていったのは。