ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「!!!」
何かが奔る気配に、俺達は防御態勢をとり、そして同時に臨戦の構えをとった
氷皇が足を使ったんだ。
こいつの足、何とかなんねえか!?
鎌鼬(かまいたち)起こして、
地面にすっぱりと綺麗な深い裂け目が入っている。
ただの一振りだろうがよ。
「ねえ、俺の相手してよ、
気高き獅子――」
氷皇は胡散臭く笑いながら、再びその足を櫂に振り上げ――そして止めた。
俺が咄嗟に、燃えさかる炎の盾を2人の間に割り込ませたからだ。
「アカ――。未熟な弟子に、渡すなよ力を」
氷皇は嘲笑し、絡みついてくるその炎に向けて手を伸ばすと――炎を鷲掴んだ。
否――。
その手で炎を凍らせた。
「あ!!?」
炎が凍ることってあるのか!!!?
多分、俺の力が…氷皇に敵わないからだろう。
緋狭姉だったら、そんなことにはなりやしねえ。
氷皇…。
こいつは足だけじゃなく、
緋狭姉のような力を操れるのかよ!!?
「そんなに意外? アカから言われなかった? 五皇もまた紫堂の縁者だって」
その氷は完全に俺の炎を滅し、
尚も櫂の放つ透明な風さえ凍り付かせようとする。
「アカも馬鹿だねえ。付け刃に負けるわけないじゃない、この俺がさ!!」
そして氷が、風の発生源たる櫂の手に伝わった時。
「――!!」
氷皇は僅かに顔を歪めると、
突如伸ばした手の方向を変えた。
破裂音!!
一歩退いた氷皇が、間髪入れずに足を振り上げた先には、
「櫂を……殺させない」
依然光を纏った玲が居た。