ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



人型を崩した――

獰猛な肉食獣の顔。


真紅の唇は、耳元まで裂けている。


凶気に満ちた肉食獣。



「ぐわああああああ!!!」



昨夜同様、四つん這い状態で…逃げ遅れた人々を襲いながら、確実にこちらの方向に近づいてくる。 


あたし達はあまりの恐怖に身を竦ませ、お互いを支えあっていた。



悲鳴。

絶叫。

鉄の匂い。


そして……。



「薔薇の匂い……」




弥生からではない。


もう目の前に居る――

舌舐め擦りをするソレから漂う匂い。



ああ、昨夜の少女からしたものだ。

この匂いの記憶は。 



「!!!?」



突如、ソレと目が合う。



ソレは尋常ではない速さと跳躍力で、こちらに一気に飛び掛ってきたんだ。



「危ない、弥生!」



ソレが向かったのはあたしではなく、弥生だった。


だからあたしは力一杯弥生を突き飛ばして、寸前で彼女を逃す。


弥生を助けないと。

弥生を!!!


とにかく必死で。


それだけであたしは動いていた。

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