ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「弥生ッッ!!!」


ソレはあたしには目もくれず、再び尻餅をついて青ざめている弥生の喉笛に、噛み付こうとしている。


咄嗟にあたしは持っていた鞄を、渾身の力を込めてソレの後頭部に叩きつけた。


ソレは不可解な擬音語を放ちながら、あたしに向き直る。

あれだけ思い切りぶん殴ったのに、大したダメージにはなっていない。


あたしから汗が流れる。



「弥生、逃げて!」

「え、芹霞……」


「早くッッ!!!

逃げれないなら、そこの路駐している車の窓、叩き割って飛び乗って!」


悲鳴に近いあたしの声。

一身に浴びても弥生は動かない。

……というより動けないのだ。


「弥生!!!?」


ああ…

ソレの標的はあくまで弥生で。

弥生が獲物に選ばれて居て。


「………くっ!!!」


あたしは唇を噛んで覚悟を決める。

絶対、大切な友達を犠牲にはしない。


「きゃああああああ!!!」


弥生の悲鳴。


ソレが再び弥生に噛み付く…寸前、あたしはソレの髪の毛を思い切り後方に引いて、その背中に、全体重をかけた肘を食らわせた。

あたしだって、緋狭姉の妹だ。

技術や経験はないけれど度胸だけはある。

それに煌の戦いを見たのだって、一度や二度のことじゃない。


怖いのは間違いない。


だけど、そんなこと言ってられない。


あたしが弥生を守らないと!!!
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