ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
かと言って俺が回復に回ったら、今俺が相手している氷皇に煌は無事ではいられまい。
緋狭さんの炎さえ、俺の風でさえ、無効化させた氷皇相手に。
だがどうしても、玲の回復が優先事項だ。
「おお、さすがにやるねえ、気高き獅子。あはははは!」
肉と肉、骨と骨。
身体のあらゆる細胞を目覚めさせ、交戦する。
思っていた以上に、氷皇は強すぎた。
しかも、遊ばれている。
「あはははは、見てご覧」
余裕で遠くを促した先には芹霞。
陽斗が傍に居るからひとまず無事だと安心しきっていたのが、裏目に出た。
「きゃああああ」
陽斗が芹霞に――。
……!!!!!!
「ゆるせねえ~ッッッ!!!」
俺の気持ちを代弁するかのように、煌が叫ぶ。
俺と…同じ方向を睨み付けていた。
まるで自分のものに手を触れた不届きな輩に対して、当然の制裁を加えに行くように、煌は憤然と立ち上がった。
朱色の結界の中で、ぐったりと横たわる玲を片手に。
煌の結界を見たのは、本当に久しぶりだ。
紫堂の力がなくてこの結界の出来はさすがだが、煌の集中力が他にそれているのが気掛かりで。
「陽斗~~ッッッ!!!」
独占欲、所有欲。
それも痛い程判るけれど、今はそれより玲の方が一大事だ。
玲の力は急激に消耗し、纏う光も急に弱くなったから。
「煌ッ!!! ひとまず芹霞と玲を緋狭さんの処へ連れていけッ!!! 私情は後だッッ!!」
聞こえたのかどうかは判らないけれど。