ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
この光は――
地下で見た魔方陣と、藤姫を纏っていたあの光。
真上に立っていた俺は、顔を顰めた。
何だ……この、悍しさ。
戦慄を感じているらしい、この俺が。
どくん。
心臓が警鐘のように波打った。
俺の身体の中心から…
忌むべき何かが急速に俺を凶気に染めていく。
「――ッ!!!」
俺は思わず両膝をついて呻いた。
脂汗が地面に滴り落ちる。
身がぎりぎりと捻り殺されそうだ。
痛いとか苦しいとか、そんな感情を越えた――底知れぬ恐懼。
未知なる存在の恐怖に、身体の震えが止まらない。
囚われる。
縛りつけられる。
沸き上がる――
恐怖という本能に。
意思とは無関係に、地面に額を擦りつけるようにして、俺はその恐怖から逃れるために叫んだ。
そして仰け反って振り仰ぐようにして見た空は――青味を増していて。
白い光に取り込まれる…
血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)。
俺を恐怖に捕らえた光は、更なる凶々しさを強めて輝きを増す。
この光は…
呪詛、か。
俺に…向けられているのか。
これが…黒の書の力か。
あまりの恐怖に耐えきれず、発狂すると言われる呪いの書。
形なきものが、此の世に闊歩するという禁断の書。
この恐怖は――
その気配を感じ取っているのか。
人間如きがどうにもならない、
計り知れない闇の存在に。