ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~





この光は――


地下で見た魔方陣と、藤姫を纏っていたあの光。


真上に立っていた俺は、顔を顰めた。



何だ……この、悍しさ。


戦慄を感じているらしい、この俺が。



どくん。


心臓が警鐘のように波打った。



俺の身体の中心から…

忌むべき何かが急速に俺を凶気に染めていく。



「――ッ!!!」


俺は思わず両膝をついて呻いた。


脂汗が地面に滴り落ちる。


身がぎりぎりと捻り殺されそうだ。


痛いとか苦しいとか、そんな感情を越えた――底知れぬ恐懼。


未知なる存在の恐怖に、身体の震えが止まらない。


囚われる。

縛りつけられる。



沸き上がる――

恐怖という本能に。



意思とは無関係に、地面に額を擦りつけるようにして、俺はその恐怖から逃れるために叫んだ。


そして仰け反って振り仰ぐようにして見た空は――青味を増していて。


白い光に取り込まれる…

血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)。


俺を恐怖に捕らえた光は、更なる凶々しさを強めて輝きを増す。


この光は…

呪詛、か。


俺に…向けられているのか。


これが…黒の書の力か。


あまりの恐怖に耐えきれず、発狂すると言われる呪いの書。


形なきものが、此の世に闊歩するという禁断の書。


この恐怖は――

その気配を感じ取っているのか。



人間如きがどうにもならない、

計り知れない闇の存在に。






< 921 / 974 >

この作品をシェア

pagetop