ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


ああ…芹霞…。

お前も…闇に…沈むのか?


冷たく昏い闇に、またお前を沈ませようとしているのか?


今度は――

この俺が!!



ああ…。


…この闇を

俺1人で背負えたら。


俺にもっと力があれば。

お前を道連れにしなくても済むのに。



――芹霞ちゃあああん!!!



俺はまた――

あの絶望感を味わうのか?



俺が闇に還れば――

お前を守れるか?


ああ、だけどその前に。




芹霞。



会いたい。



死ぬ前に、1度で良いから会いたいよ。


俺が闇になる前に、お前の温かさを感じたい。


あれで最後は嫌だ。



――芹霞ちゃああん!!



芹霞。


芹霞――!!!!




会いたい…。





会いたい!!!!







「――櫂ッ!!!」




その幻聴に俺は、薄く目を開く。



願望が、最期に形となったか。



幻でもいい。


芹霞に触れたい。


愛してる…。



そう延べた手を――



「櫂、どんな場所に行っても、あたしはあんたを叩き起こすからねッ!!!」


きつく握りしめて叫んだのは芹霞で。


その温かさは幻には思えなくて。



「しっかりしなさい!!」



俺が恋い焦がれる強い瞳に――

俺の中の闇が薄らいだ気がした。


まさか…。

まさか!!!



「……本物?」


思わず聞いた俺に、


「当然!!」


芹霞は親指を立てた。



――芹霞ちゃああん!!



思うんだ。

死にかけの俺の傍にいるより、煌や玲、緋狭さんの傍にいた方が、幾らか生きながらえるかも知れないと。


芹霞を想うなら、1秒でも長い彼女の生を願うべきだと。


そう思えど――

嬉しいんだ。


最後に、芹霞に会えたことが。


芹霞が会いにきてくれたのが、堪らなく…嬉しかったんだ。


こんな時なのに!!!


『自ら戻ってきたか、無力で愚かなる小娘。紫堂櫂の力弱まった今こそ、お前の中の血染め石を抉り取り、黒の書の力でもって東京を壊して見せようぞッ!! 

ああ、なんて美しい、何て愉しいッ!! もっと、もっとッ!!

血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を糧として、暗黒の力を強めてくれようッ!!! 

そしてその大いなる力で、血染め石を操るのだッ!!!』


気狂いのような笑いが続く。


はっきりと頭に響くその声を、聞き留められたのは…俺だけではなかったらしい。


「うるさい、うるさい、うるさいッ!!!」


芹霞が声を張り上げた。
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