ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



あたしは、噛み付いたその手を、全力で窓から離す。


「弥生、早く行って!」

『芹霞、芹霞ッッ!!!』



「行けええええッッ!!!!」



あたしの怒鳴り声と共に、タクシーは走り去る。

 
「これで…いい…」


あたしのすべきことは終わった。


あたしは、もう…ぼろぼろだ。


もう少しで――

櫂も煌もここに来る。


それまで頑張れるだろうか。


もう足はガクガクだ。

あちこちが血に滲んで痛い。

恐怖に鳥肌がたって吐きそう。


「!!!!!」


今度は間違いなく、

ソレは…あたしを獲物に選んだ。


弥生を手に出来なかった、不満が爆発している。


人間じゃないものの…間近な威嚇。


怪物(クリーチャー)。


何処かの映画で、こんな…身の毛のよだつ威嚇を見た気もしてくる。


それくらいに、人外のものとしか思えない…威力。


あたしは、完全にその迫力に飲み込まれた。 



身体が動かない。

息が出来ない。




ソレがあたしに襲い掛かる



           ――時。


がくん、とソレが下にぶれた。


代わって目の前には――




「…… 大丈夫?」




深い青に覆われた男が居た。

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