ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
更に時が経った2ヵ月後――。
雑司が谷の墓地の一角に、
花を手向ける少女の姿があった。
黒目がちの大きな目。
肩で切り揃えられた黒髪。
颯爽とした空気を持つ美しい少女は、1つの墓石の前で一生懸命手を合わせていた。
「病院抜け出して、またここかよ、芹霞……」
やや癖のある橙色の髪をした精悍な少年が、呆れたように木蔭から現れた。
褐色の瞳。
野性的な逞しげな長身の肉体。
耳元には橙色のピアスをつけた――二つ名は『暁の狂犬』。
「だって……」
少女が口を尖らせた時、ふわりと暖かい外套に包まれた。
「外気はもう冷たい。風邪をひいてしまうから俺のを着ろ」
そう、静かに笑ったのは漆黒の髪を持つ少年。
憂いの含んだ切れ長の目。
通った鼻筋。
為政者特有の凛然とした美貌を持つ少年――二つ名は『気高き獅子』。
少女だけに見せる慈愛に満ちた表情に、少女が嬉しそうに頷いてその言葉に従った。
「また、妬いているんですの、馬鹿蜜柑。罪もない木の枝、そんなにボキボキ折るものではないですわよ?」
くりくりとした大きな目を動かして、半ばうんざりとした様子で橙色の少年を見ていたのは、全身黒尽くめの美少女のような美少年。
両手に抱えているのは、
黒いテディベア。
二つ名は『漆黒の鬼雷』。
「嫉妬は見苦しいね。それより芹霞、勝手に病室抜け出さないでよ、僕の心臓が持たないじゃないか。本当ならお仕置きに大きい注射だよ?」
そう苦笑したのは、鳶色の髪と瞳を持つ、端麗な顔をした白皙の美青年。
優しげな微笑浮かべる彼の二つ名は…『白き稲妻』。
彼は白衣を着ていた。