ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「永遠以上だよね?」
「は?」
「あたし達の仲は永遠さえも超える強固な絆がある。そう教えてくれたのは、櫂だよ。あたしを生かしてくれてありがとう、櫂」
少年は絶句した。
墓穴、だ。
自分の愛情故の行為は、今まで自分を苛み、煩悶させるにいいだけ煩悶させてきた"永遠"を超えて、更にその上を行く"永遠以上"になってしまったらしい。
少女の固定観念は、更に少女の中で都合よく、拗れてしまっていた。
今後とても厄介になる…予感がした。
「……ぷ。ぷぷぷぷ」
堪えきれないというような笑いが、やがて場を覆った。
冷酷非情と呼ばれる無表情の漆黒の鬼雷とて、笑いを噛み殺している。
「だっせ~のッ!!!」
「くくくく、良かったね、櫂。永遠以上にして貰えて。とってもよかったね、永遠を昇格してもらえて……いやまあ、特別は特別だし。くくくくく」
漆黒髪の少年は、忌々しげに舌打ちをした。
少女は意味が判っていないようで、絶対少年なら喜んでもらえると思った最高の賞賛を、少年は喜んでいないと悟り、しゅんと項垂れてしまった。
「そんな意味じゃなく……ああ、本当にもう」
言い訳すれば、過去の最悪事態に再び陥ることは明白で。
少女が目覚めた今とて、誠心誠意で必死に誤解を解き、ようやく元の関係に戻したというのに。
拒むことも言い訳することも出来ず、結局少女に従わざるを得ない状況に嘆くばかりで。
「お前達……見てろよ?」
未だ笑い続ける仲間達を睨み付け、当然の権利とばかりに少女を抱き締めると、嘘のようにぴったりと笑い声は止む。
判りやすい者達だった。
少女に、自分と同じ熱い想いを抱く仲間。
時に妬み、時に羨望し、特に苛つく……自分を理解出来、そして自分が理解出来る最高の仲間達。
いずれ少女を巡って争うことになろうが、今はまだこの安穏とした空気を味わいたかった。
そんな少年の心を知らず、
少女は――
身体を緊張に硬くさせていた。
少女自身も予期していない、少年の抱擁に対しての過剰反応。
幾度も抱き合ってきているのに、なぜ今更?