ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「訊かないんだ? "私にご執心な人って誰?"とか。
上手くいけば玉の輿なのに」
「過去幾度ともなく、ご執心な金持ちに拉致られ殺されそうになったからね。その手の執心は金ばかりかけて庶民の想像を超えるから、係わり合いを持たないのが身のためよ」
「面白いね、芹霞チャン。あはははは~」
胡散臭い笑い響かせながらも、至って紳士的な振る舞いで、あたしの身体に彼が着ている青い外套を着せた。
外套の中身もやはり――
青色だった。
外套を着ていればまだ幾分、高貴な雰囲気があったが、その中身は軽装で――世俗的で軽薄そうに見える。
本当にどこまでも青い男だ。
身体の中までも青いんだろうか。
「うん、俺の外套羽織っていたら、俺のお姫様っていう気がしてきた」
変なことを言い出した。
「だったら、この状況からして…自分が王子様とでも言い出すの?」
「勿論。君を救った白馬の王子様だ。
さあ、俺と恋に落ちてみようよ」
甘さなど微塵に感じられない。
なんて嘘臭い爽やかさ。
「さあさあ、姫」
あたしは耐えきれず、顔を歪めた。
「ごめん。まともなクッキー食べる、他の王子様待ってるわ」
「えええ~? 可愛いじゃん、このクッキー。俺、可愛いものが好きなんだよ~」
「趣向にとやかく言わないから、そういう仲間の、他の可愛いお姫様を捜して下さい」
「そう言いながら、食べてるじゃないか、執事クッキー」
「運動したらお腹が減って…。ま、いいじゃない」
あたし達は軽口叩き合いながら歩く。
正真正銘、初めての出会いなのに、怪しげな食べ物を食べて、歩いて行く。
てくてく、てくてく…。
ぼりぼりぼり…。
奇妙な青い男との珍道中。
あたし…何してるんだろ?