青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「いえ、そこまでは教えてくれませんでした……」

 マリィの答えに仙太は肩を落とが、マリィは両手を胸の前で組んで懐かしそうに続けた。

「でも、クヲンさんは私に色々教えてくれたんです。コッペパンの美味しさや、“教え”以外の生き方………私一人じゃ見つけられませんでした」

「はぁ……」

 いまいち論点がズレているなと思ったが、その表情があまりにも嬉々としていたので仙太は口には出さなかった。

「あ、じゃあ、その特殊任務ってのでクヲンがこの部屋を出たのっていつ頃です?」

「えっと………?」

 顎に人差し指を当て、目を上にやり、マリィは考え込む仕草をする。

「確か、五日ほど前ですね」

(クヲンが転校して来た日だ………)

 どうにも嫌な予感が仙太の胸の中で渦巻く。

 “特殊任務”

 正体は天使とはいえ、ただの高校生が使う言葉としてはあまりにも不釣り合いだ。

 時期が同じというだけでは確証はないが、彼が“神杯”に関係する“本”を理由に転校して来たのなら、“特殊任務”も“神杯”に関係するものではないのかと、どうしても仙太は考えてしまう。

 そうなってはもう、居ても立ってもいられなかった。

「…………やっぱり僕、学校行きます……確かめないと!」

 気持ちが焦って慌てて立ち上がる仙太だが、その瞬間、体中の怪我が痛んでまたしゃがみこんでしまう。

「だからまだ………あ──」

 一気に顔色が青くなった仙太の肩に手をかけようとしたマリィの手が途中で止まる。

 どんなに体中が痛くても、仙太の眼差しは真っ直ぐ玄関を見つめていることに気付いたからだ。

 息切れしながら仙太は告げる。

「すみません……でも、やっぱり行きます……世話の掛かる奴もいるんで……」

 その時の仙太の表情は痛みに歪んでいながらも、優しい笑みだった。

 それを見たマリィは徐に立ち上がると、すでに煮え立っている味噌汁の火をとめる。

 そして、背中から黒い翼を生やすと仙太に背を向けた告げる。

「行きましょう……一緒に」

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