青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「た、たかがコッペパンくらいで大げさなんだよ」

「それだけじゃないですよ」

「あん?」

 まだあるのか? と、疑問符を浮かべるクヲンにマリィはクスクスと微笑を浮かべながら嬉しそうに話す。

「言ったじゃないですかクヲンさん。“自分自身の心で正しい生き方ってやつを見つけて、楽しく生きてみなって”……」

「………」

「人を不幸にするという生き方しか知らない……“教え”に縛られていた私に“教え”以外の生き方を教えてくれたのはクヲンさんです。そして、私は今、すごく楽しいんです」

 満面の微笑みを浮かべるマリィ。それがあまりにも魅力的かつ眩しくて、クヲンは思わず目を逸らしてしまった。

 直視できないのは自分に後ろめたさがあるからなのか……

 歯痒そうに唇を噛む。

「そうか……それは良かったな」

 俯き、沈んだ口調で呟くクヲン。声が届くは微妙な所だったが、マリィはコクンと頷いた。

「クヲンさん、今、楽しいですか?」

 マリィの問いかけを、クヲンは自分自身でもう一度心の中で反復する。

 純粋にマリィと刃を交えている時は楽しかった。

 それは、全てを忘れていたからだ。

 だが、全てを思い出している今はどうだろう。

「正直、微妙だ。けど、これはどうしてもやらなきゃならない。俺自身が楽しくなくても、誰かの笑顔のために……」

「けど、クヲンさんが苦しんで、その誰かは笑顔になると思いますか?」

「さぁな?」

 そう答えたものの、ならないだろう、とクヲンは確信する。

そう、確実に今この時を置いて、その誰かである彼女からは笑みが消えているからだ。

「私は……少なくとも私は笑顔になれません」

 微笑が消えたマリィの瞳が潤んでいるのをクヲンは見てしまった。

 見るに絶えずまた目を逸らしてしまう。

「悪い……でも、どうしてもやらなきゃならない」

 例え、お前が笑顔にならなくても、結果としてお前のためになるのなら、という言葉は呑み込んだ。
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