青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 立ち去ろうとするクヲンに、マリィはそっと告げる。

「クヲンさんらしくないですよ」

 その言葉に一瞬、足を止めそうになったクヲンだが、そんな己を叱咤して歩を進める。

「クヲンさんは私の生き方を変えてくれたんです。凄いんですよ……そんな人が、自分の生き方を変えられないなんておかしいです」

 ふと、足が止まる。その後もクヲンは無言のまま、マリィの言葉を背中で受け止め続けた。

 何が言いたい?

 背中がそう言っているようだった。

「楽しくない…それって、自分の生き方をしていないってことですよね?」

「かも、しれないな」

 クヲンが口を開いたことにマリィは、一瞬、驚いた表情をするものの、すぐに安心した顔となった。

 だが、クヲンは表情が暗いまま続ける。

「けど、もう引き返せないんだ。説得は無駄だぜ」

「そう…ですか………」

「あぁ、だから俺は空兎を追いかける。止めたかったら力づくでしかないぜ?」

 そう言ってクヲンはマリィに背を向けて、今度こそ振り返ることなくその場を立ち去ろうとする。

 落下のダメージでマリィは動けないはず。

少なくともクヲンはそう思っていた。


 その時だ。


 ―――ビリッ。


 突如、クヲンの背中に怖気が走った。

 疑いながらも振り返る。そこにはマリィが槍を正面に真っ直ぐに立てた状態で、スー、ハー、と深い呼吸を繰り返しながら顔を俯かせていた。

「わかりました……力づく、ですね?」

 口調は変わっていないが、明らかに雰囲気がいつものマリィとは違う。

 全身から迸っている漆黒の気配。

 今まで秘めていた敵意とも殺意とも違う、全く別の意思が剥き出しとなっている。

 顔を上げたマリィにクヲンはゾッし、寒気を覚えた。

 いつもの微笑の中に底知れぬ冷たさが混ざっている。

 その雰囲気は、まさしく“悪魔”そのものだった。
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