青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「危ねっ…!」

 空兎の行動が意外だったのか、肝を冷やしたクヲンが慌てて飛び退く。それを見計らって空兎はゆっくりと足を降ろした。

「なんか格闘技とか、やってるわけ?」

 引きつった笑いをしながらクヲンが尋ねると、空兎は得意そうにウインクして、

「さぁね? せっちんにでも訊いたら?」

 と、笑いながら応えた。

(おっそろしい奴だ)

 そう思いながらも、またマリィの時のような高揚を感じずにはいられないクヲン。

 思わずそれが表情に出そうになるのを堪える中、突如、空兎が言い放つ。

「ねぇ、クヲンくん、なんで止めたの? もしかして、まだ迷ってる?」

 その言葉にクヲンの高揚感は吹き飛んだ。自然と顔が俯く。

「…………」

 その問いに返す言葉はなく沈黙を保つクヲン。答えはある。だが、クヲン自身がそれを認めたくないだけなのだ。

 そんなクヲンの心情を見透かすように、空兎がさらに言い放つ。

「そんなんじゃ、アタシは捕まえられないよっ!」

 クヲンをたしなめるのではなく、己の自信を目一杯アピールするかのような声。

 そんな空兎に、仙太はハラハラする。

「ちょっ、なんでそんなことを言うんだよ!?」

 力の差は明らかなのにそこまで自信が持てる空兎が仙太には理解できなかったのだ。

 先ほどの攻防はクヲンにその気はなかったようだが、彼が本気になれば武器や翼も持たない空兎はひとたまりもないだろう。

 だが、空兎の自信に満ちた表情に変わりはなかった。

「だって、クヲンくんには、本気でぶつかってきてほしいもん!」

 その瞬間、クヲンがハッと顔を上げる。

 そこには真っ直ぐ自分を見つめる空兎の眼差しがあった。
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