青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
 二年後、彼は彼女が結婚することを知る。

 そして、彼女が身篭っていることも知ってしまった。

「幸ちゃん、私、ちゃんと生めるかな……赤ちゃん」

 僅かに膨らんだお腹を擦りながら、彼女は彼に相談する。

 自分が病弱なせいで、生まれてくる子供が無事かどうか、それが不安なのだ。

 自分の命よりも。

「さぁ…な」

 彼は曖昧に応えることしか出来ない。彼女が結婚すると知った時、正直ショックだった。

 しかも、相手は同じ大学に通っていた留学生の先輩だとしって、彼は追い討ちをかけられた気分となった。

 だが、嬉しそうな彼女の顔を見ると、あぁ、これで良かったんだなと、彼は思う。

「冷たいなぁ、幸ちゃん」

 クスクスと、彼女はまた笑う。言葉間違ったかなと、彼は思ったが、知ったかぶりが出来るほど彼は器用ではない。

 ましてや、根拠のない励ましなども……

「怖い…か?」

 彼が尋ねると、彼女は視線を落とした。

「怖くない、って言えば嘘だよね。お母さんやお父さんは「大丈夫」って言ってくれるけど、どんなに励ましてくれても、不安は消えないよ」

「その……あの人は?」

「あの人?」

「…………君の結婚相手」

「ああ……彼は忙しい人だから……今も海外で新薬の研究中よ。でも、出産予定日には来てくれるみたい」

 その予定日だって、不安定なくせに……という言葉を彼は言えなかった。

 言うべきではないと思った。

「でもね、毎日連絡はくれるの! 国際電話って高いのにね! それに時差だってあるのに!」

「金持ちなんだろ。それに、旦那になるんならそれくらいは当然だろう」

「クスッ、幸ちゃんって、厳しいね」

 無邪気に笑う彼女の笑顔を、彼は永遠に忘れることはないだろう。
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