青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
§


 テントに配置されていた医療機器が瞬く間に、魔法の炎に包まれていく。

 まるでセレビアの怒りを象徴するかのような炎は機器を焼き、ベッドを燃やし、テントを炎で包み込んだ。

「ち、鎮静剤を!」

「や、やめっ……ぎゃああ!!」

 重傷を負ったセレビアの応急処置を担当していた医師たちがなんとか暴れる彼女を抑えようとするが、火の粉が白衣に飛び散ると、それだけで我先にと一つしかない出入口のテントに群がり始める。

 セレビアはそんな彼らを蔑むような目つきで一瞥すると、同じテント内で治療を受けていた氷付けのレンカ・仲里に視線を移す。

「ま、これで溶けるでしょ」

 微笑を浮かべたその顔が次の瞬間、苦痛に歪む。腹部の傷が開いたのだ。

「応急処置じゃ、こんなものね」

 セレビアは本来ならばここで応急処置を受け、後ほど組織の医療施設に搬送される予定だったのだ。

 しかし、応急処置の途中で目が覚めたセレビアは途端に体が動いてこの騒ぎを起こした。

 彼らに二度目の施しを受けたのが、屈辱だったのだ。

「利用されるのは、嫌いなのよね」

 セレビアは医者たちが群がっている出入り口に向かって、風の魔法を唱えた。
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