=寝ても覚めても=【完】

種明かしを終えた主は、笑顔のまま。

悪気ない様子に状況がのみ込めず、何度か瞬きをした。



それからようやく羞恥心が、込み上げて来た。

余りの屈辱に、最初から言う事を聞くはずだった右手で口を覆って顔を背けたら、向いた部屋の壁がへにゃりと揺れた。


『に、仁科・・・?』





仁科の祖父は町医者をしていた。

父親は若いころに厳しい祖父に反発して商人になり、何不自由なく裕福な家に育った。


老いて祖父が丸くなったのか、父がようやく大人になったのか、自分が学校に通う頃には二人は和解していて、忙しくて家にあまりいない両親に代わって祖父の診療所が仁科の遊び場所であった。

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