=寝ても覚めても=【完】

『すみません・・・、驚いて、しまって・・・』


余りに表情までが優しいので、思わず謝ってしまった。

とても、とても心外であった。



思ってもいない事を言ってしまい、なおさら涙は止まらない。


なので、ノックもせずに現れた宇治方先生に泣き顔まで見られてしまった。

慌てて顔を背けた仁科はまず、薬品置場の毒薬の位置を思い出そうとした。


『やはりか。何したんだ、直嗣』


『大丈夫?』でも『どうした?』でもなく、宇治方先生は仁科を見て苦々しくそう言った。


『人の仕事場で、人の可愛い後輩に何をしてくれたんだって聞いている』

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