かさの向こうに縁あり
そのすぐ後だった。


歩いている場所の雰囲気が変わったことに気づいて、立ち止まったのは……



舗装されているはずの歩道は、ただの砂利道に。

激しく降っているはずの雨は、止んでいる。


そしてもう一つ。


目の前と左右に、誰かがいる気配がする。

1人じゃなくて、3人ぐらいが私を囲むようにしているんだと思う。


今までに感じたことのない、妙な緊張感が体中を駆け巡っていく。



「おい、そこの女」



突然、低い声が耳に響く。

たった一言なのに威圧感があり、傘を上に上げて目の前の人達を見ることができない。


それなのに、怖い夢を見ている時のような感覚がしてならない。



「はい」



でも返事をした声は弱々しく、そして震えている。

無意識にも、同時に一歩後ずさると、それに合わせて男達は一歩踏み出してきた。


――逃げさせない。

――必ず捕まえて殺す。


そんな殺気が感じられる。



「お前、異人か!」



変なことを聞かれる。

異人って、いつの時代の言葉?とか暢気に思っている場合ではないけれど。


とりあえず、私の身に危険が迫っていることだけは理解できた。



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