かさの向こうに縁あり
ここは否定するべき?

いや、しなくてはいけない気がする。



「いや、生粋の日本人ですけど。何か?」



喧嘩を打っているような強気な口調で言う。


まだ傘で顔を見せていない。

それに、覗き込もうともしてこない。


でも私の一言で、場の空気がさらに張り詰めてきたことに気づく。

そして、目の前に立つ男性がまた一歩、踏み出してきた。



「それなら、顔を見せろ。異人でない証拠をな!」



怖い。

あの夢よりも、事故に遭うよりも、何よりも怖い。


もしかしたら、ここで死ぬのかもしれないな。


そう思いながら、私は一度傘の持ち手を強く握り締め、心中で決心をしてから、前を見つめて傘を宙に投げた。



「え……?」



その刹那、私は目を見開き口もぽかんと開けてしまった。


どういうことか全く状況が読めない。


前に立つ3人の男性の服装、髪型、そして風景。



「どこが生粋の日本人だ。その格好はなんだ!」



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