かさの向こうに縁あり
お茶を一口啜ってから、荷物の中から矢立と紙を取り出した。

私が紙に文字を書き始めると、平助はそれを隣から覗き込んできた。



『巡察は終わったんですか』


「終わったよ。それで今、俺は休憩してたの」



そうだったんだ、と私は数回頷く。

そして団子を口に運ぶ。


もちっとした食感は、私がこれまで食べてきた団子と大差なかった。

おいしい。


はっきり言って、団子を食べる平助なんて想像できなかった。


毎朝私を起こしに来てくれて、いつもふらっと現れてはすぐに去る。


そんな、どこか掴みどころのない平助しか見たことがなかったから。

こうして二人で隣に座っていることが新鮮。



そんなことを考えながら団子を一欠片食べ終わる頃、平助は小さな声を発した。



「……本当はね、ここで妃依ちゃんにお土産を買って帰るつもりでいたんだ」



照れ臭そうにそう言う彼の横顔は、いつか見た、頬が赤く染まったものだった。


近頃の平助は、どこか様子がおかしい。


私はそう確信した。



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