かさの向こうに縁あり
私だって知りたい、平助のこと。


なんとしてでも、彼が隠していることを突き止めたい。

尋問するような感じになってしまうけれど。


私の気持ちも伝えよう。

紙に文字を書くんじゃなくて、自分の口で。


だから口パクで、平助に伝えよう。



平助の肩をちょんちょんとつつけば、彼は私をきょとんとした表情で見る。


数秒見つめあってから、私は口を開いた。



『私も』


「……え?」


『私も平助のこと、知りたい』



口パクで伝わったんだろうか。



その後も少し見つめあう。

恥ずかしくなって私から視線を逸らし、前を向く。


平助は団子の棒を皿に置くと、私と同じように前を向き、再び空を見上げた。



「……いいよ。お互いのこと、色々教えあおう」



まるで初な恋人みたいな。

そんな風に見えなくもない私達は、ふっと微笑み合った。

嬉しくもあるけれど……ちょっと複雑。


何だか、平助の声音が少し寂しそうで……


そんな私達に、春の生温い風が吹き抜けていった。



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