かさの向こうに縁あり
そういえば、誰の血なんだろう。

目の前が全て赤に染まる程の大量出血を、一体誰がしているんだろうか。


誰か、ではなくて、もしかすると私……?

夢の中で私は……死ぬ?


というか、もうすでに死んでいる?



色々と想像を膨らませれば、徐々に怖くなってきた。


死にたくなんかない。

しかも、幕末にタイムスリップみたいなことになってしまった今にだけは。



もう一度右腕を上に伸ばして、何か掴めないかと手を握る。


すると、今度は生暖かい感触の何かを掴むことができた。


腕を戻し、目の前で握った手を開いてみる。

生暖かいと思ったのもそのはず。



――それは、鮮やかな赤の血だった。



思わず目を見開く。

別に血に驚いたのではない。


無性に咳をしたくなったからだ。

というよりは、何かが喉でもぞもぞと蠢くような感覚がして何だか気持ち悪い。



『――まだし……いで――』



また声が聞こえてくる。

そういえばこの声、どこかで聞いたことがあるような気……



『……っ!』



その時、唐突に吐き気に襲われた。


く……苦しい――誰、か――…



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