かさの向こうに縁あり
「――っ……!ふ……」



――あまりの苦しさに、どうやら現実に引き戻されたらしい。


勢い良く布団から上半身を起こし、乱れた呼吸のまま辺りを見渡す。

全身に汗をかいているようで、額の汗を手の甲で拭う。



畳、障子、床の間、布団。


変わったことは何もなかった、と言うより……



ここはあの女性の家だったんだっけ……


すっかり忘れていた、私は新選組の所から夜道を走って逃げ出してきたことを。


それと同時に、名前も聞かずにいたことも思い出す。



どこからも光は射していないけれど、辺りは闇から脱け出したようだ。

暗さはなくなり、どこかから漏れる光だけが部屋を明るくしていた。


どうやら朝になったようだ。



ふう、と乱れていた息を整えて、さっきまでの夢を振り返る。


血に染まった後のあんな続き……私が苦しくなるなんて、昨日まではなかった。

初めて見たし、初めて何かを感じた。


毎日、話が進んでいる?

だとしたら、それは何で?


何で私に、毎日続きを紡いでいく夢を見せるんだろう……



< 55 / 245 >

この作品をシェア

pagetop