かさの向こうに縁あり
「妃依ちゃんっていうんだ!可愛い名前ね」



そう言われた瞬間、ふいにある人にも似たようなことを言われたと思い出した。



『妃依ちゃんか!可愛いね』



言葉が重なる。


でもあの人はもう関係ないんだ。

……早く忘れよう。


彼の言葉を頭の中から消去すると、苑さんの言葉に微笑んだ。



「ねえ、いきなりであれかもしれないけれど……」



私の微笑みに対して苑さんも同様にすると、私にそう呟いた。


何を言われるのか、正直言うと怖い。

出てって、とは言わなさそうな雰囲気の女性だけれど。


次に口を開いて出た言葉は、想像もしていなかったものだった。



「京見物に行かない?」



「へ?」と私はぽかんと口を開け、間抜けな表情をした。

でも、思っていたよりも凄くいい方向に進めているようで安心した。


せっかくのお誘いだったが、あえて質問をしてみよう、と筆を動かす。



『お時間は大丈夫なんですか』



得たいの知れない私の為に時間を割いてくれるなんて、もったいないと思ったから。

だからそう書いた。



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