かさの向こうに縁あり
「全然気にしないで!それに京見物と言っても、私が知っている所しか案内できないけどね」



「気にしないで」って言われると余計に気になる……


苑さんの台詞に不思議だな、と思わせるように頭を傾げる。

すると、あっと呟いて彼女は話を始めた。



「あ、私ね、実は江戸生まれなの。旦那様が生きてた頃、彼の用でただこっちに来ただけなのよ」



へー、と言うように頷く。

だから関西弁じゃないんだ、と今さら気づいて納得する。


そういえば、旦那さんが亡くなったと言っているわりには、さっきから一つも悲しそうな表情をちらりとも見せない。

女の強さからかな……


そんなことが気になりながらも、私は筆を走らせた。



『では、京案内、よろしくお願いします』



微笑んでそれを彼女に見せると、それを見て満面の笑みを返してくれた。



「任せて!」



そう言っては、苑さんは現代で言うガッツポーズをした。

そして二人で笑い合う。



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