かさの向こうに縁あり
「まずは祇園社ね、祇園さん!ここから一番近いから!」



言われるがままに、私達は苑さんと“祇園社”という所に行くことになった。
神社……だろうか。

綺麗な着物に着替えた私の手を握り、引っ張って。



私が苑さんを追いかけた後、彼女の部屋で私に合う着物を選んでくれて、慣れた手つきで着させてくれたんだ。


そうか、昔の人ってみんな着物の着方知ってるんだよなぁ、なんてつい思ってしまった。



――そして今に至るわけだ。


生温い風と共に、通りを走り抜けていく今。


ゆっくりと街を歩く人達、お店の店員らしき人達の視線が一気に集まる。

それは二人の女が走っていることに対してのものではないことに、私はすぐに気づいた。



「見て!異人さんやわ」


「異人や……」



彼等が私を見ては、口々にそう言っているのが聞こえたからだ。


“異人”


そう言われる理由は、きっとこの短い髪。

この時代の女性は皆長髪だから、彼らにとって私は異人にしか見えないんだろう。



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