雪月花~死生の屋敷
過去を見せる時計
時間間隔も解らない夢幻回廊を進む私…。

私の体内時計が正常に働いているのであれば、私はこの道を3日間ほど歩き続けていると思う。

遡る事3日ほど前である…。

「この道ってどれぐらい歩くと頂上に到着するの?」

思わずユキちゃんに聞いてしまった。聞くのが遅いぐらいではあるが、長くても1時間ほどで到着すると考えていた私だったのだが、かれこれ3時間は歩いている。

それでも頂上に到着する気配を感じないので、聞いてみたのだ。

「それは解らない。頂上を決めるのはお姉ちゃん自身だから」

と訳の分からない返答が返ってきた。正直この返答に頭を抱えた私だったのですが、何度聞いても同じ様な回答しか得る事が出来ずに今に至るのです。

雪月花はとても不思議なところです…。

私の体は疲れを知らないし、眠気も感じない。空腹すらも感じないのです。

なので歩き続ける事が出来る。ユキちゃんはなぜか眠気を感じるようで、今も私の腕の中で眠っている。

小さな寝息を立て、穏やかな表情で眠りにつく姿は子供でしかない。その姿からは巨大な力を持つ霊魂とは到底思えない。

歩く事に飽きてきた私は、少し休憩をする事にした。ユキちゃんを抱いた状態で、壁に背を預け、少し斜度になっている坂を計算に入れつつ、一番落ち着く体勢を探した。

そうして試行錯誤の末に一番落ち着く体勢を見つけた私は、携帯電話を開き、適当に弄る事にした。携帯電話には思い出がたくさん詰まっている…。

孝也との思い出がたくさんあるのです。写メにメールに音楽…。

プリクラなどもある。携帯に転写して保存したものもたくさんあった。

それらを見ながらその時の思い出を探す。中学生の頃に何気なく撮った写メや、付き合い始めの頃の写メ…。

良く良く見てみると、付き合う前と後では私と孝也の距離が違う事に気づいた。付き合う後では寄り添うように撮った写メが多い。

何も語らない写真なのに、画像を見るだけで当時の私に戻った気がした。
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