ノイズ
ゆらゆらと蜻蛉(カゲロウ)のように揺れ動いていた影は、やがて人の姿になった。


‘それ’は膝を抱えてうずくまっているように見えたが、ふいに顔を上げて可奈の方を見た。


見覚えのある顔が、暗い目で可奈をじっと見つめている。



まさか。



その顔は忘れもしない、親友の裕美だった。


裕美はなおも可奈を見つめていたが、やがて唇を上下に動かしたかと思うとブツブツ呟きはじめた。


だが、海の底にいるようで声がはっきり聞こえない。



裕美、あたしに何を言いたいの?



こちらも金縛りのせいで上手く声が出せず、ひどくもどかしかった。



「…か…な……じ……さ………」



一言一言、喉の奥から絞り出すように裕美は言った。

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