ノイズ
教授。またこの作品をご覧になっていたのですか」




「おお沢村君。この『殉教』に勝る作品はないよ」





沢村は有栖川教授のために、地下のワインセラーからヴィンテージワインを持ってきていた。




有栖川教授は作品を鑑賞する時は必ずヴィンテージワインを飲み、チーズを食する。





そして大音量でオペラを流しては、ひとり悦に入るのが常だった。




「昨夜の女子高生はお気に召しませんでしたか?」




「そうだな。若さに溢れた実に健康的なお嬢さんではあったが、美しさと気品が欠けている」



沢村は僅かに眉根を寄せると、有栖川教授のグラスにワインを注いだ。




有栖川教授が『殉教』と名付けたこの作品は、愛好家たちの間でも評判が良かったが、特に有栖川教授のお気に入りでもあった。





もし、自分が見知らぬ何者かに拉致監禁されたうえに激しく痛めつけられ、あまつさえ辱めを受けた後に殺される運命にあったとしたら。





この別荘に運ばれた多くの女性たちは、泣き叫び、ただひたすらに許しを乞い願い、自分たちの運命を呪いながら死んでいったのだ。



ただ一人を除いては。




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