an alley cat
あれから数年後、私は立派な黒猫になっていた。




たまに他の野良猫から喧嘩を吹っかけられる時もあるけれど、私は喧嘩が大嫌い。

他の猫が近付いてきたら、逃げるのが私のモットー。





―喧嘩無しで何が立派な野良猫か。



いいんです。

私は怪我はしたくない。

他の野良猫と違ったっていい。




―ただ、生きてさえいられれば、ね・・・。











キーンコーンカーコーン・・・



学校の鐘が聞こえる。

私は今、冬真くんが通う高校の前にいる。

この街の、色んな所を散歩する事が、毎日の日課。







「きゃははっ、昨日!?まじでぇ!?」

「まじ!でさぁ、・・・あれっ?猫がいる!」

「猫?」


生徒玄関から歩いてくる3人の女子高生。

私を見つけるなり、近寄ってくる。


「かーわいーいー!やばい超綺麗な黒猫だねぇ!」

「いーなぁ、あたし猫飼いたいんだぁ」

女の子達は私の頭を撫で、楽しそうに笑っている。





「じゃーねぇにゃんこ」

「ぁーかわいい~!」

「こーらっ、さっさと行くよ」


3人の女の子達は、少し名残惜しそうに私に背を向けて歩いて行った。





―どうしよう、このまま冬真くんたちを待っていようかな?


でも、なんだか心細い。





私が校門でうろうろしていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「まじで!お前馬鹿だろ」

「うるっせぇな、手前ぇは黙ってろよ!」

朝に聞いたような言い争い。







この声は、きっと・・・。












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