あのころ、グラフィティ
女の悲鳴が聞こえたと思ったら、女が這いつくばって追いかけてきた。


あまりの怖さにオレは、恥ずかしさも忘れ叫んでしまい、その場から逃げようとした。



けど、手をつないでいるたまちゃんがビクともしない。
それどころか、オレを逃げさせないように両手で引っ張られた。



「大丈夫だよ、貫。ちょっと、逃げたら困るぅ!」


そんなこと言ったって、女が...女が近づいてくる。


「だまぢゃぁぁ~~ん!」

「大丈夫だってば!」


そのとき、オレの肩を叩く。

後ろに誰かいる。



ゆっくり後ろを振り向く。



「うらめしや~~」




!?



「あ゙ぎゃゃゃゃ~~!」


オレは飛び上がって、たまちゃんにしがみついた。


「ちょっと、貫!?く、ぐるじー...」

「悪霊退散、悪霊退散...」


オレのあまりの驚きように、お化けも引いたんだろう。
素顔を見せて言った。


「...ご、ごめん!陣内、オレだよ、中山。そんな驚いた?......山本ぉ!いったん中止!戻って戻って!」


中山はオレと同じクラスのやつ。


「ふぇっ、中山?」

「うん。中山。脅かしてごめんな、...それじゃ、仲良く。」




仲良く?

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