あのころ、グラフィティ
「いいじゃん、いいじゃん。寿司屋が並ぶなんて初めてのことじゃない!?」

「そうだな、邦が店を出店させるなんてなぁ。...俺んちも負けてらんねぇな。」


邦とはうちのオヤジ、陣内邦昭の名。


「なぁに言ってんだよ。毎年、売り上げがいいのは『八百花』じゃねぇか。」

「まぁな。あの特製盛り合わせフルーツポンチが利いてるな。でも、今年は邦が出すとなると、どうなるか。」

「あたしも買いに行くよん!安くなるんでしょ!?」

「まぁ、今の単価より...


「バカだな、桜ねぇ。常連客は、今と同じ値段だよ。」

オレは、後ろを振り向いて言った。


「え!?そうなの?」


オヤジは、オレの頭を叩いた。


「福の言ってることは嘘だから。」

「あんたねー!」

「あーあー、すいませんでした。」

「...まぁいいわ。お茶、ちょうだい。」


桜ねぇが来ると、オレはパシりに使わされる。


「イヤだね、自分でいれろよ。」

「はぁ!?あたし、客なんだけど!」

「客?関係ないね!」

「はぁ!?たまには、おじさんの手伝いしなよ!いっつもいっつも、ただで食いやがって!」

「うっせー。これは家族の特権なの~!」


オレと桜ねぇのやり取りはいつものこと。だから、周りも驚かない。

このまま放置プレイ。

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