オバケの駐在所
さらに容赦なく、
『げんこつ』か
『張り手』の類の暴力を
顔面に浴びせると、
繕った格好も気にせず
彼女は駅のほうへ
走っていった。
この天気で
わかりにくかったが、
その目尻から明らかに
涙を流していたのがわかった。
俺も慌てて
その後を追ったが、
赤信号に阻まれてしまい、
やむなく後ろ姿を見送る。
……しまった。
今さら嘘をつく
必要もないはずなのに。
職場でフラストレーションでも
溜まっていたか、
小百合にまで
あたってしまった。
軽率な発言で
失敗したことは
過去に何度となくあるが、
これは今すぐに
釈明したい。
そう思ったその時、
一台のタクシーが
急に横断歩道へ
すごいスピードで
横付けしてきて、
俺に乗れと促すように
後部座席の扉を開けた。
一瞬、誰に対してかと思って
躊躇したが、
俺は迷う間も惜しんで
それに乗りこんだ。
「あの、
駅に向かってください!」
しかし車は
それを無視して
まったくあさっての方向に
舵を切り出した。
「ちょっと、
駅はあっちですって」
しかも運転手は
何を言っても
無言で無表情である。
車内を包んでいる
訝しい空気。
すると、
絶対に誰も
乗っていなかったはずの
助手席側から、
低い声で誰かが俺を呼んだ。
『げんこつ』か
『張り手』の類の暴力を
顔面に浴びせると、
繕った格好も気にせず
彼女は駅のほうへ
走っていった。
この天気で
わかりにくかったが、
その目尻から明らかに
涙を流していたのがわかった。
俺も慌てて
その後を追ったが、
赤信号に阻まれてしまい、
やむなく後ろ姿を見送る。
……しまった。
今さら嘘をつく
必要もないはずなのに。
職場でフラストレーションでも
溜まっていたか、
小百合にまで
あたってしまった。
軽率な発言で
失敗したことは
過去に何度となくあるが、
これは今すぐに
釈明したい。
そう思ったその時、
一台のタクシーが
急に横断歩道へ
すごいスピードで
横付けしてきて、
俺に乗れと促すように
後部座席の扉を開けた。
一瞬、誰に対してかと思って
躊躇したが、
俺は迷う間も惜しんで
それに乗りこんだ。
「あの、
駅に向かってください!」
しかし車は
それを無視して
まったくあさっての方向に
舵を切り出した。
「ちょっと、
駅はあっちですって」
しかも運転手は
何を言っても
無言で無表情である。
車内を包んでいる
訝しい空気。
すると、
絶対に誰も
乗っていなかったはずの
助手席側から、
低い声で誰かが俺を呼んだ。