オバケの駐在所
すぐに顔を向けると、
帽子を目深にかぶった
昨日の警官が
いつの間にか
そこに座っていた。

もちろん俺は
死ぬほど驚いた。

「驚かせて申し訳ない。
ちょっと今のは
危険が迫っていたんだ。
家から出るなと
言っておいたのに」

「お、お、お前
どっから沸いてでた」

「最初から乗っていたよ。
それより外を見な。
沿道の陰になってるところだ」

怪談に出てきそうな、
かなり虚を突いた
乗車をしてきた男。

俺はろうばいを見せながら
警官の言うままに
車の窓から外の様子を
覗いてみると、
一定の間隔をおいて植えてある
街路樹の隙間に
車と同じスピードで
黒いものが一緒に
流れていくのが見えた。

よく目を凝らすと、
それは何か獣の群れのような
妖しい影で、
都心の人ごみを縫って
併走しているようだ。

なんだあれは……?

「ほら、アレにずいぶん
穏やかでないことを
お願いしただろう?
あなたを付けて来て
正解だった。
今ここで降りたら
アレに喰い殺されるかも
しれないが、どうする?」

俺は酔っていて
少し助かったと思った。

仕事もプライベートも
板挟みのうえ、
こんな常識のないこと
シラフだったら
まともに処理
できなかったろう。

体を強張らせながら、
俺は一旦そこに
座りなおした。

視線は警官どころじゃない。
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