オバケの駐在所
「じゃああれが排水溝の……。
でも外を歩く人は
どうして誰も
騒いだりしないんだ?
見えてもいないみたいだ」

「オバケに関して
なかなか人はその存在を
認めようとしないからね。
普通は見えないものさ。
……それにこれは
あなたが招いたタネだ。
これから生きるも死ぬも
あなた次第だが、
せめてあっけなく
頓死しないように
あと1日は俺が
しっかり見届けるよ。
もちろん提出された
届けの効力もあるしね。
さあ、運転手さん。
彼の家まで飛ばしてくれ。
奴を撒こう」

タクシーは歩道に
近づかないように
ブレーキも踏まないで
右折を繰り返した。
そして東京を割る
大きな国道を
ひたすら真っ直ぐ走る。

……ずいぶん
後味が悪い酒に
なってしまった。

小百合は無事に帰れてるかな。

事は思いもよらず、
とんでもない方向へ
向かっていたらしい。

もしかしたら俺はすでに
死んでいるんじゃないかとも
考えた。

だからオバケなんて
おかしなものが
現れるんじゃないかって。

前の席に乗っている2人は
思ったよりも陽気で、
ラジオの周波数を合わせて
オードリー
ヘップバーンだかが出てた
マイ・フェア・レディの
懐かしい曲を
口ずさみ始めた。

規則的なワイパーの音が
ちょうどシンドロームの
変わりになってるみたいで、
なんとなくこいつらは
悪い奴らではない気がする。

後ろを振り返ると、
黒い妖しい影はすでに無く、
車のヘッドライトが
追いかけてくるだけだ。

窓に点く光の水滴が
今にも滴り落ちそうだった。
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