オバケの駐在所

甲高い耳障りな音が
AVアンプから
四方のスピーカーに
突き抜けた。

前のほうに座っている
リクルートの延長のような
若い新入社員は
あまり気にする素振りを
見せなかったが、
後方にいる後輩たちは
これ見よがしに
嫌な顔をしてみせた。

俺はマイクを持っていた手を
ほんの少し下にずらす。

「――みなさんも
よくわかっているとおり、
ファイナンシャル
アドバイザーとして
働くにあたり大事なこと。
まず1つ。
顧客から要望を引き出すための
インタビュー技術が
個々の力として
重要になってきます」

一月ぶりのセミナーは
会社の同僚と
これから資格をとろうとする
ビジネスパーソンで、
何十人と座れる
100平米ほどのフロアを
埋めていた。

しかし反響をみせていると
思った演題も、
仲間内の大半は
俺の言葉尻を捉えようとして
集まっているらしい。
そこには部長の姿もある。

なんともやりづらかったが、
まぁ泣き言を言っても
誰も助けちゃくれない。

飾り気のない
アプリコットの講壇から
できるだけ言葉の端を
強める口調にして、
言葉に芯を入れるように
マイクへ放った。
それは何をつつかれても
退かないという
意志を表すためだ。

「これからの人生のサポートも
さることながら、
現状の状況をしっかりと
把握することは
未来の道筋を据える
大きなポイントとなります。
2つめに自分の意識下における
怠慢さ。それにあたり――」

――ぴちょん。
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