オバケの駐在所
確かにそれと似たようなことを
言った覚えはあったが……。

「素直にひたむきに生きよ。
誠心誠意、
人生と向き合って
自分に嘘をつかないことが
幸せに繋がるのだと。
それは私の考え方とは
まるで逆で
猪突猛進な若いところが
嫌みったらしく感じたが、
けれど君は
別の間違った取引にも応じず、
たとえ人に忌み嫌われようとも
会社のために奉仕して
口上だけの他の輩とは違う
言葉通りの素直な
行動をしていた。

本来君のような人に
そばにいてもらうべきなのに
何を意固地に
なっているのだろうと
私は思ったよ。
みなさん、
このような形になって
申し訳ない。
良かったらこの
前途有望なる若者を
もう一度壇上に
迎えてやってはくれまいか。
もちろん、
この人に自分らの未来を
預けられるんじゃないかと
心から思うものだけでいい。
……まぁ、私はなんの
心配もしちゃいないがね」

そう言って両手を小さく
上下に打ち合わせると、
まるでフルートから始まる
ボレロのように
だんだんと部屋を
拍手の大渦が飲み込んだ。

部長を見た。

ツルリとはげあがった頭が
手を打つたびに
キラキラ反射する。

よかった。

……部長め。
ちょっと蛍光灯に
近い位置に座ったんだな。

他のみんなも
にこやかに壇上へ
誘導してくれている。

率直な意見を言うと、
俺は嬉しかった。

若いなんて
久しぶりに言われたのもある。
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