オバケの駐在所
小百合が口うるさく
言ってくれたおかげだ。

「私と契約を取り直しては
もらえないだろうか?」

俺だって酸いも甘いも
骨髄を砕いてまでやってきた
営業の一端だ。

じいさんのその言葉を
実は心より
望んでいたのだと、
やはり先日の失敗もどこかで
気にかけていたのだろう。

壇上から差し伸べられる
手をとろうと
極上のスイーツを
食べる思いで、
ふらふら拍手に
誘われるがままに近寄る。

よかった。やった。
って心の中で小さく叫んだ。


――ぴちょん。


その時にかすかに耳の奥へ
またあの音が
叩きつけられた。

「ぐあっ……」

誰だ変な声を出したのは……
と思ったら
それは俺の声で、
気がつくと視界は
窓際の壁のへり越しに
外の雪が見えて天井があった。

そしてものを考えるのも
疎ましいくらい体が熱くて、
心臓の鼓動が
大きくなっていく。

……なんだ?
今みんなに
祝福されていたのに。

頭痛が激しくなり
体がいうことをきかなくて、
自分が部屋の隅で
無造作に寝そべっているのが
わかった。

「大丈夫か!?」

あの警官の声だ。

「あのバカ!
加減を知らねーんだから!
動けるか!?」

同時に空気を破裂させる
銃声が一回、二回と頭に響き、
四方から喉を鳴らした
大型の獣のようなうなり声が、
同じく空気を震わせていた。
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