オバケの駐在所
警官は俺の肩を強引に担ぐ。

目眩を振り払って
顔を上げてみると、
講義室のあたり一面が
黒く変色していた。

席に座っていた
受講者のみんなは
気を失っているように
ぐたっと支え柱を
なくしていて、
その口から這い出ているものが
段違いにアーチを描いて
並べられている
長机の黒いシミとなっている。

そして壇上で
顔をこちらに向け
青白い眼を丸く光らせている
黒い人間。
コーデュロイの服を着て
恐ろしく尖った片手の爪で
講壇の机を
床ごと引き裂いている
異形な者。

「……これは。なんてことだ」

それらがなんなのかは
すぐにわからなかったが、
警官の言っていた
オバケって言葉が
むなしく頭をよぎった。

「行きましょう。
ここに本体は
どうもいないようですので」

と、おもむろに
隣にいた野村が指図してきた。

きつそうなスーツながら
等身大の窓枠の上に
器用に足を上げて乗ると、
指で私について来いと
一丁前に命令してくる。

というか様子がおかしい……?

ニコッと微笑む
彼女の瞳の内側も
アンティークな
パールゴールドに輝いている。

するとどういうことか
彼女の頭の先からも
メキメキと
銀色の角らしきものが
生えてきた。
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