オバケの駐在所
警官が野村と手をとり
同じくふちに足をかけた。

開け放った窓から
カーテンがはためく。

「ほら、捕まりな。
こいつらは別に
見境がないわけでもない。
あなたの同僚は大丈夫だろう。
それより問題を
片付けに行かなきゃな」

「は、はあ?
行かなきゃって……。
まさかそこから外へ?
下は首都高……だぞ」

だいいちみんな無事……?

これはもう大事だ。

すぐに救急車に警察……
いや、防衛省に
知らせたほうがいい……。

振り返ると
じいさんの格好をした黒い奴が
ひたひたと探るような
足取りで近づいてくる。

どうしよう。
もはや猶予はないんだ。

「そう、猶予はない。
それに見えないんじゃ
自衛隊もお手上げだろ。
さあ、来いよ。まかせろ」

また、こいつ
わかったような口を。
今度はなんだ?
背後霊にでも聞いたのか?

……なんだってんだよ。

覚悟を決めて
俺は差し伸べられた手を
掴んだ。

突如、雪の降りしきる
窓の外へと引っ張られた。

強く。力強く。
そしてどこまでも。

空中を踏んで、
ニュートン力学に逆らい、
灰色の雲に向かって飛んだ。

雪が顔に強く当たるが
それどころではなく、
東京の大都心の空を
どんどん昇っていくことに
俺は心の底から震えた。
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