告白
「残念、時間切れ。」


耳に聞こえる、はっきりした声。


清水くんが急に離れ、向かい側に座る。


突然、観覧車のドアがあけられる。


「お疲れ様でした。」


係員の、明るい笑顔と大きな声。


「じゃ、降りようか。」


清水くんに手を引かれて降りる。



……えっと、そっか、着いたんだ。


今さらながら状況がわかった。


今、何があったの。


夢?


いや、夢じゃない。


微かに自分から香る、柑橘系の香り。


私、清水くんに……抱きしめられたの?


顔が赤くなるのが自分でわかった。


「顔真っ赤。」


クスクス笑う清水くん。


俯いた顔をのぞかれる。


恥ずかしくて、顔を背ける。


「ねぇ、俺さ、少しは自惚れていいかな。
嫌われてないから、少しは好かれてるんじゃないかって、自惚れていい?」


違うよ。


自惚れるとか、そういう事じゃないの。


また、告白出来なかった。

なんでうまく話せないんだろ。


「…はは、ごめん。
俺自惚れすぎか。」


つないだ手を、ゆっくり離そうとする清水くん。
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