茜ヶ久保マリネの若気の至り
何も知らぬ者は、茜ヶ久保マリネは肉を斬る感触にとり憑かれた魔性の女と囁くだろうか。

馬鹿な。

私だって他の人魚達と同じく、月夜には浅瀬の岩場に腰掛け、星空を眺めながら竪琴を奏でたりしていたいに決まっている。

だけど女王の私が戦わずして、誰がこの人魚の海を護るのか。

己が手を血で汚す事を恐れ、暴虐を恐れ。

深海の洞穴に閉じこもって震えているだけでは、愛する海は護れないのだ。

だから私は海刀神を身につけたのだ。

血塗られた人魚と罵られる事を承知の上で。

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