茜ヶ久保マリネの若気の至り
「待った」

リヴァイアサンが異を唱える。

「マリネ、君は僕がサハギン達をけしかけたと思ってるのかい?」

心外とばかりに言葉を紡ぐ。

「だとしたら大きな誤解だ。僕らリヴァイアサン一派の傘下に、サハギン族はいない」

「あら」

疑いの眼差しを隠す事なく私は言う。

「傘下にいなくとも、あんたの言葉に従わない者はこの海にはいないわ…私を除いてね」

「止してくれよ」

両手を広げて、オーバーアクションで。

彼は何とか誤解を解こうとする。

「サハギン達は己の欲望だけに忠実で、理性的じゃない。ああいう手合いは組織破綻の原因になるんだ。だから僕は彼らを傘下には加えなかった」

「だけど一派に加えなくとも、命令に従わせる事はできるわよね…何せあんたは海竜王リヴァイアサンだもの」

「……」

先程まで薄笑みすら浮かべていた優男の顔から、表情が消える。

「止してくれよマリネ…そんなにしつこく食い下がられたら…殺したくなっちゃうじゃないか…」

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