Alice Doll


***


 どーうしても今日はこんなことになってしまう日のようだ。


 由衣は今までかけたことのないアンティーク調の椅子に、居心地悪気に座っていた。
 何度も何度も居住まいを正すが、どうにも落ち着かない。

 目の前のゴシック調の机も、二重にも三重にもなっているカーテンも、高価そうなカーペットも絵画も花瓶も、極めつけは彼女を見下ろすシャンデリアも、すべてが夢のようだ。

 あの時、猫を追って入った門扉は、アパートか何かの門扉だと思っていた。
 しかし実際には大きく違った。ここはとても大きな一軒家だったのだ。

 お金持ちの住む屋敷に不法侵入しちゃったってことだよね。

 由衣は目を右に左に動かしながら、警察に突き出されたら何と言おうかと考えていた。最早、家の鍵のことなど二の次だ。

 それにしても、この部屋までくるのに余裕がなかったせいか、改めて見るとかなりの屋敷だと由衣は思った。

 こんな家、普通は有り得ないよね。
 人形ないけど……、噂の人形屋敷だったりして。ま、そんなハズないか。

 ゆっくり部屋の中を観察してみると、やはり人形などどこにもいない。
 と、いうことは人形屋敷ではないのだろう。

 そう由衣は判断した。


 ではここはどこなんだろう。一体自分はどれだけ遠くにきてしまったのだ。

 が、そう途方に暮れていても仕方ない。先程の女性がまた来たとき、今度はちゃんと顔を見て、話を聞いてもらおう。
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