プリンセスの条件
不安を残したまま、いつの間にか時間は午後11時。
翔太からは何の連絡もなかった。
諦めてお風呂に入って、髪を乾かしてベッドに入った時には、あと5分で日付が変わる時間になっていた。
携帯を開いてみても、メール一通、不在着信すら残っていない。
ギュッと携帯を握りしめて、そのまま布団を頭から被った。
そんな時、玄関のチャイムが鳴り響く。
「え……」
一気にこみ上げる期待。
もう一度チャイムが鳴ったと同時に、あたしは勢いよくベッドを飛び出した。
玄関まで走って、誰かも確認せずにドアを開ける。
「翔太!?」
「お前、まずは相手を確認しろよ。危ないだろ?」
呆れたようにそう言った後、翔太は両手に荷物を抱えたまま、さっさと部屋に上がる。
「えッ、翔太?」
「あー重い。ちょっと買いすぎたか」
そのままリビングでドサッと荷物を下ろしたかと思うと、時計を確認するなり、また忙しく動き始める。
「やべー、時間がない!マイ、ちょっとそこどいて」
「え……」
「あ、グラス2つ出してくれる?」
「う…ん…」
わけも分からないまま、お気に入りのグラスを2つ出す。
気付いた時には、テーブルの上に、ケーキやチキン、サラダ、シャンパンなんかが並んでいた。