プリンセスの条件

「ねぇ、翔太。言ったって、何のこと?」


「もういいだろ、その話は」


「よくないッ!あたしが聞いてないだけって、そんなの気になるよ!!いつ、何を言ったの!?」


翔太はしばらく黙り込んだ後、小さく溜め息をはいて、観念したように言った。


「“愛してる”ってセリフなら、前にも言った。マイを初めて抱いた時」

「え……」


あの、時?


ただの幼なじみだったはずのあたしたちが、初めて男と女になった日。


顔に熱を感じながら、一生懸命記憶を辿って……行き着いたのは。


『ーーーる、マイ』


「あ……」

「思い出したか?」


後から翔太は『案外胸ある、マイ』なんて誤魔化したけれど、きっとあの言葉は……


「あいしてる、マイ……?」


そう聞くと、翔太は照れくさそうに笑った。


「リピートすんな」


あの時はまだ、自分の気持ちにすら気付いていないあたしだったけど、翔太はちゃんとあたしのことを好きで、抱いてくれていたんだ。


胸がジーンと熱くなって、やっぱりあたしは泣いた。


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